Japanische Klassiker mit Furigana
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よとまんねんひつ
余と万年筆
Lesen Sie 余と万年筆 (よとまんねんひつ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.776 Zeichen · 6 Bildschirme
万年筆に就て何等の経験もない余は其時丸善からペリカンと称するのを二本買って帰った。そうして夫をいまだに用いているのである。が、不幸にして余のペリカンに対する感想は甚だ宜しくなかった。ペリカンは余の要求しないのに印気を無暗にぽたぽた原稿紙の上へ落したり、又は是非墨色を出して貰わなければ済まない時、頑として要求を拒絶したり、随分持主を虐待した。尤も持主たる余の方でもペリカンを厚遇しなかったかも知れない。無精な余は印気がなくなると、勝手次第に机の上にある何んな印気でも構わずにペリカンの腹の中へ注ぎ込んだ。又ブリュー・ブラックの性来嫌な余は、わざわざセピヤ色の墨を買って来て、遠慮なくペリカンの口を割って呑ました。其上無経験な余は如何にペリカンを取り扱うべきかを解しなかった。現にペリカンが如何に出渋っても、余は未だかつて彼を洗濯した試がなかった。夫でペリカンの方でも半ば余に愛想を尽かし、余の方でも半ばペリカンを見限って、此正月「彼岸過迄」を筆するときは又一と時代退歩して、ペンとそうしてペン軸の旧弊な昔に逆戻りをした。其時余は始めて離別した第一の細君を後から懐かしく思う如く、一旦見棄たペリカンに未練の残っている事を発見したのである。