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Japanische Klassiker mit Furigana

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やすきちのてちょうから

保吉の手帳から

芥川 竜之介

Lesen Sie 保吉の手帳から (やすきちのてちょうから) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.771 Zeichen · 18 Bildschirme

Aozora Bunko

彼は一時間の授業時間を三十分ばかり過した後、とうとう訳読を中止させた。その代りに今度は彼自身一節ずつ読んでは訳し出した。教科書の中の航海は不相変退屈を極めていた。同時にまた彼の教えぶりも負けずに退屈を極めていた。彼は無風帯を横ぎる帆船のように、動詞のテンスを見落したり関係代名詞を間違えたり、行き悩み行き悩み進んで行った。

そのうちにふと気がついて見ると、彼の下検べをして来たところはもうたった四五行しかなかった。そこを一つ通り越せば、海上用語の暗礁に満ちた、油断のならない荒海だった。彼は横目で時計を見た。時間は休みの喇叭までにたっぷり二十分は残っていた。彼は出来るだけ叮嚀に、下検べの出来ている四五行を訳した。が、訳してしまって見ると、時計の針はその間にまだ三分しか動いていなかった。

保吉は絶体絶命になった。この場合唯一の血路になるものは生徒の質問に応ずることだった。それでもまだ時間が余れば、早じまいを宣してしまうことだった。彼は教科書を置きながら、「質問は――」と口を切ろうとした。と、突然まっ赤になった。なぜそんなにまっ赤になったか?――それは彼自身にも説明出来ない。