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Japanische Klassiker mit Furigana

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やすきちのてちょうから

保吉の手帳から

芥川 竜之介

Lesen Sie 保吉の手帳から (やすきちのてちょうから) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.771 Zeichen · 18 Bildschirme

Aozora Bunko

わんと云えばこれをやるぞ。」

乞食の顔は一瞬間、物欲しさに燃え立つようだった。保吉は時々乞食と云うものにロマンティックな興味を感じていた。が、憐憫とか同情とかは一度も感じたことはなかった。もし感じたと云うものがあれば、莫迦か嘘つきかだとも信じていた。しかし今その子供の乞食が頸を少し反らせたまま、目を輝かせているのを見ると、ちょいといじらしい心もちがした。ただしこの「ちょいと」と云うのは懸け値のないちょいとである。保吉はいじらしいと思うよりも、むしろそう云う乞食の姿にレムブラント風の効果を愛していた。

「云わんか? おい、わんと云うんだ。」

乞食は顔をしかめるようにした。

「わん。」

声はいかにもかすかだった。

「もっと大きく。」

「わん。わん。」

乞食はとうとう二声鳴いた。と思うと窓の外へネエベル・オレンジが一つ落ちた。――その先はもう書かずとも好い。乞食は勿論オレンジに飛びつき、主計官は勿論笑ったのである。

それから一週間ばかりたった後、保吉はまた月給日に主計部へ月給を貰いに行った。あの主計官は忙しそうにあちらの帳簿を開いたり、こちらの書類を拡げたりしていた。