Japanische Klassiker mit Furigana
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いだいなるゆめ
偉大なる夢
江戸川 乱歩
Lesen Sie 偉大なる夢 (いだいなるゆめ) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 117.988 Zeichen · 234 Bildschirme
病室にはこの二つの扉の他に出入口はない。
患者の寝台の枕下に小卓が置かれ、その上にのせた絹張り傘の電燈が、室内を朧ろに照らしていた。小卓の向側は庭に開いた押上げ窓である。庭に面してはいても、ここは階上なので、長い梯子がなくては外部から侵入することはできない。庭には見張りがあり、又室内には絶えず人目がある。この方面からの攻撃は殆んど不可能と考えられていた。
ところが、敵はその虚をついて意外の一撃を加えたのである。その夜更け、一時を少し過ぎた頃、窓の垂れ幕が風もないのに幽かに揺れて、押上げ窓のガラス戸の下部が僅かに開かれ、そこから黒い手袋をはめた手が、一匹の生物のように、室内に這い込んだのである。
その時室内には患者の外には一人の看護婦がいるばかりであった。しかもその看護婦は寝台の枕下の椅子に腰かけて、コクリコクリと居眠りをしていた。黒い手は窓と寝台との間にある小卓に伸び、その上を巧みに這い廻って、盆の上の水薬の壜を掴むと、そのまま窓の外へ消えて行ったが、一分もたつかたたぬに、再び黒い手は窓から忍び込んで、薬壜を元の位置に置いた。壜の中身に何ものかが加えられたか、壜そのものがすり換えられたのであろう。