Japanische Klassiker mit Furigana
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けんこうとしごと
健康と仕事
上村 松園
Lesen Sie 健康と仕事 (けんこうとしごと) von 上村 松園 (うえむらしょうえん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.869 Zeichen · 8 Bildschirme
ふと絵具皿の色に眼がつく。それが疲れ切った眼に不思議なくらい鮮明に映る。めずらしい色などその中にあると、
「おや、いつの間にこのような色を……ちょっと面白い色合いやなア」
と思わず眺め入ってしまう。それをここへ塗ったらとり合わせがいいなあ――とつい思ったりすると、いつの間にか右手は筆をもっている。識らず識らずのうちに仕事のつづきが続いている。
同じように、寝ようとしてふと眺め直した絵の線に一本でも気になるのがあると、
「すこしぐあいが悪いな……この線は」
とそれを見入っているうちに修正の手がのびているのである。そして識らず識らず夢中になって仕事をつづけている。興がのり出す。とうとう夜を徹してしまう。知らぬ間に朝が障子の外へ来ているということは、しばしばというよりは毎日のようなこともあった。
「はて、いつ一番鶏二番鶏が啼いたのであろう」
私は画室の障子がだんだん白みを加えてゆくのを眺めながら昨夜の夢中な仕事を振り返るのであった。
気性だけで生き抜いて来たとも思い、絵を描くためにだけ生きつづけて来たようにも思える。
それがまた自分にとってこの上もない満足感をあたえてくれるのである。