Japanische Klassiker mit Furigana
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きずあとのはいけい
傷痕の背景
豊島 与志雄
Lesen Sie 傷痕の背景 (きずあとのはいけい) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.022 Zeichen · 38 Bildschirme
車外に、白シャツ半ズボンの、商店の若者らしいのが、ちらりと見えた。
田舎の街道を走る、自動車や馬車や電車などには、殊に夕方など、私用の伝言や品物を車掌に頼むのが、よくある。頼む方でも頼まれる方でも、無償で、親しげに笑っている……。
その、ちらと頭に沈んだ印象に、杉本はうっすらと微笑みかけたが、見ると、女車掌の習慣的な掌で背を支えられて、五六歳の女の子が、ひょいと、入口近くの席に坐った。
おかっぱの、しなやかな髪。怜悧にませて見える、整った顔立。金と黄との、胴のつまった上衣。桃色の短いスカート白の靴下。リボンのついた可愛いい黒靴……。宙にういた足をきちんと揃えて、五十銭銀貨を差出した。
「まさご町……。」
そして、車掌から渡された、切符を右手に、つり銭は、紐のついた赤い小さな金入と一緒に、左手に握って、肩を斜めに、首をねじって、窓から外を見てるのである。
その利発そうな顔、柔かな白い皮膚、支那めいた服装を、夕日が赤く反映で染めて……。
杉本は、やさしい眼付をその少女から離さなかった。せめて、つり銭をあの金入に入れてやるくらいの親切が……と一種の公憤を、疲れてぐったりしてる女車掌の背中に投げながら、それとは全く別な、少女の可憐な姿を見守った。