Japanische Klassiker mit Furigana
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme
仰天したのは侍臣である。バラバラと左右に取り付いたが、
「こは何事にござります! 千金の御身にござりまする! こは何事にござります!」
「放せ放せ! 放せと云うに!」
「殿!」とこの時進み出たのは諏訪家剣道指南番宮川武右衛門という老人であった。「殿、私が参りましょう」
「おお武右衛門、そち参るか」頼正は初めて機嫌を直したが、
「しかしそちは既に老年、この難役しとげられるかな?」
「は」と云うと武右衛門は膝の上へ手を置いて慎ましやかに一礼したが、「勝つも負けるも時の運。とは云え相手は妖怪か悪魚。それに安房の海男とは云え勇力勝れた灘兵衛さえ不覚を取りました恐ろしい相手、十に九つこの老人も不覚を取るでござりましょう」
「不覚を取ると知りながら、尚その方参ると云うか」審かしそうに頼正は訊く。
「はい、行かねばなりませぬ」「行かねばならぬ? それは何故か?」「他に行く者ござりませぬ」
「いかさま……」と云うと頼正は憤らし気に四方を見た。
「いえ、たとえ他にござりましても、この老人遮ってでもお役を勤めねばなりませぬ」
「はて、それはまた何故であろうな?」
「私、指南番にござります。