Japanische Klassiker mit Furigana
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme
「これは不思議だ」と葉之助は声に出して呟いた。「遠い遠い遠い昔に、私は何んだかこの小屋に住んでいたような気持ちがする。……しかしそんなことのありようはない!」忽然、この時絶壁の上から、人の呼び声が聞こえて来た。
「おいでなさい! おいでなさい! おいでなさい!」慈愛に充ちた声である。
二五
「おいでなさい、おいでなさい、おいでなさい!」
慈愛に溢れた呼び声がまた山の上から聞こえて来た。
鏡葉之助はそれを聞くと何んとも云われない懐かしの情が油然と心へ湧き起こった。
「誰かが俺を呼んでいる。行って見よう、行って見よう」
忙しく四辺を見廻した。正面に当たって崖がある。崖には道が付いている。その道は山上へ通っている。
で葉之助はその道から山の上へ行くことにした。苔に蔽われ木の葉に埋もれ、歩き悪い道ではあったけれど、葉之助にとっては苦にならなかった。で、ズンズン登って行く。
こうしてようやく辿りついた所は、いわゆる昔の笹の平、すなわち窩人の部落であって、諸所に彼らの住家があったが、人影は一つも見られなかった。
見られないのが当然である。十数年前に窩人達は漂泊の旅へ上ったのだから。