Japanische Klassiker mit Furigana
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme
気味の悪い声であった。主のない声であった。
そうしてそれは怨恨に充ちた哀切凄愴たる声でもあった。
そうして彼はその声に聞き覚えあるような気持ちがした。
この言葉に嘘はなかった。実際彼は日一日と心に不安を覚えるようになった。心の片隅に小鬼でもいて、それが鋭い爪の先で彼の心を引っ掻くかのような、いても立ってもいられないような変な焦燥を覚えるのであった。事実彼の心からいつか安穏は取り去られていた。
「どうしたのだろう? 不思議な事だ」
彼にとっても、この事実は不思議と云わざるを得なかった。
で、意志の力をもって、得体の知れないこの不安を圧伏しようと心掛けた。しかしそれは無駄であった。
「何物か俺を呪詛っているな」
ついに彼はこの点に思い到らざるを得なかった。
「たしかに、あの声には聞き覚えがある。……おおそうだ、久田の声だ!」
正にそれに相違なかった。水狐族の長の久田の姥の怨念の声に相違なかった。
久田の姥の怨念は、ただこれだけでは済まなかった。
間もなく恐ろしい事件が起こった。そうしてそれが葉之助の身を破滅の淵へぶち込んだ。
ある夜、書見に耽っていた。
と例の声が聞こえて来た。