Japanische Klassiker mit Furigana
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme
いやいや決して嘘ではない! 信じられない人間は、翌朝早く家を出て、城下を通って見るがよい。あっちの辻、こっちの往来、向こうの門前、こっちの川岸に袈裟に斬られた男女の死骸が、転がっているのを見ることが出来よう。殺人鬼の通った証拠である。
「どうも今度の曲者ばかりは、葉之助の手にも合わないらしい」
父、弓之進は呟いた。「ひとつ助太刀をしてやるかな」
事情を知らない弓之進がこう思うのはもっともである。
しかしそれだけは止めた方がいい。毛を吹いて傷を求める悲惨な羽目に堕ちるばかりだから!
「もう捨てては置かれない」
こう呟いた人があった。「やむを得ずば俺が出よう」
それは松崎清左衛門であった。
当時天下の大剣豪、立身出世に意がないばかりに、狭い高遠の城下などに跼蹐してはいるけれど、江戸へ出ても三番とは下がらぬ、東軍流の名人である。――いかさまこの人が乗り出したなら、殺人鬼といえども身動き出来まい。
しかしはたして出るだろうか?
その夜も雪が降っていた。
傘を翳した一人の武士が静々と町を歩いていた。と、その後から覆面の武士が、慕うように追って行った。
角町から三筋通り、辻を曲がって藪小路、さらに花木町緑町、聖天前を右へ抜け、しばらく行くと坂本町……二人の武士は附かず離れず半刻あまりも歩いて行った。