Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やつがたけのまじん

八ヶ嶽の魔神

国枝 史郎

Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme

Aozora Bunko

一三

しかし老人はビクともせず、悠然と正面へ突っ立ったが、猪の皮の袖無しに、葛織りの山袴、一尺ばかりの脇差しを帯び、革足袋を穿いた有様は、粗野ではあるが威厳あり、侮り難く思われた。

で見物は次第に静まり、小屋の中は森然となった。

「ええ、ご見物の皆様方へ、熊相撲の始まる前に、お話ししたいことがございます」

不意の、錆のある大きな声で、こうその老人が云い出した時には、見物はちょっとびっくりした。

「他のことではございません」老人はすぐに後をつづけた。

「我々山男の身分について申し上げたいのでございます。私の名は杉右衛門、一座の頭でございます。一口に山男とは申しますが、これを正しく申しますと、窩人なのでございます。そうして住居は信州諏訪、八ヶ嶽山中でございます。そうして祖先は宗介と申して平安朝時代の城主であり、今でも魔界の天狗として、どこかにいる筈でございます。本来我々窩人なるものは、あなた方一般の下界人達と、交際りをしないということが掟となっておりますので、何故というに下界人は、悪者で嘘吐きでペテン師で、不親切者で薄っぺらで、馬鹿で詐欺師で泥棒で、下等だからでございます……」