Japanische Klassiker mit Furigana
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme
……真昼の光に照らされて紅葉の林が燃え立っております。雑草に雑った野菊の花。風に揺れなびく葛の花。花から花へ蜜をあさる白い蝶や黄色い蝶、峰から丘、丘から谷、谷から麓へ群を作して渡って行く渡り鳥。……何んと平和ではありませんか。――谷川の音は自然の鼓、松吹く風は天籟の琴、この美妙の天地のなかに胚胎まれた恋の蕾に虫を附かせてはなりません。――幸福というものは破れ易くまた二度とは来ないものです」
こう云いながら妙な人は二人の方へ手を延ばした。と、山吹も岩太郎も思わずその手へ縋り付く。その二人の手を繋ぎ合わせ、妙な人は云うのであった。
「美しい衣服は裁縫師が製し位や爵は式部寮が造る。要するにみんなつまらない物です。尊いものは人の愛だ! いつまでもいつまでも愛し愛さなければなりません。二人のうちの誰か一人がもしこの愛を破ったならその人は恐らく底の知れない不幸の淵へ沈むでしょう」
「はい」
と岩太郎は涙を流し、つつましく丁寧に頭を下げたが、
「たとえ殺すと云われましても今日のお教えに背くようなことは必ず私は致しませぬ。……山吹! お前はどうする気だな?」
「岩さん、妾が悪かった。