Japanische Klassiker mit Furigana
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme
「おお岩か」
とそれと見ると、物憂そうに杉右衛門が声をかけた。
「ああそうだよ。俺らだよ」
こう云いながら岩太郎は囲炉裡の側へ近寄って来たが杉右衛門に向かい合って胡座を掻いた。見ると手に白鳥を下げている。
「爺つぁんと一杯飲ろうと思ってな、酒を二升ばかりさげて来たよ」
白鳥をドサリと囲炉裡傍へ置く。
「なに酒か済まねえなア」
それから焚火でかんをして二人はグイグイやり出した。
しばらく二人とも黙っている。
それが二人には胸苦しいのである。
一六
「岩」
と不意に杉右衛門は云った。
「お前ちっとも酔わねえじゃねえか」
「そういう爺つぁんだって酔ってねえようだな」
「どうしたのか俺はちっとも酔えねえ」
「俺もそうだ、ちっとも酔えねえ」
そこで二人は沈黙した。その沈黙は長かった。そうして息苦しい沈黙である。
戸の隙間から吹き込むと見えて雪が二人の肩へ掛かった。嵐の名残りが迷い込んだものかパッと焚火が横になぐれたが、またすぐスッと立ち直った。
まだ二人は黙っている。
と、突然岩太郎が云った。
「どうも俺には解らねえ! どう考えても解らねえ!」
「何が!」
と杉右衛門が突っ込んで行く。