Japanische Klassiker mit Furigana
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme
赤児も元気よく育って行った。
こうして幾月か月が経ちまた幾年か年が経った。
五年の歳月が飛び去ったのである。
五年に渡る辛労が山吹の体を蝕んだと見えとうとう山吹は病気になった。五歳になった猪太郎が必死となって看病はしたが、定命と見えて日一日と彼女の体は衰えて行き死が目前に迫るように見えた。
ある日彼女は猪太郎を枕もとへ呼び寄せた。そうして彼女は云ったのである。
「……妾の云うことをよくお聞き。お前のお父様は城下の人で五味多四郎というのだよ。……妾はその人に欺瞞されたのだよ。――じきに妾は死ぬだろう。ああこの怨みこの呪詛を返すことも出来ずに死ぬのだよ。妾は死んでも死にきれない! 猪太郎や妾にはお願いがある。お母さんに代って憎い多四郎へ、お前から怨みを返しておくれ! それが何よりの孝行だよ! ……おいでおいで猪太郎や妾の側へ来るがいいよ。腕をお出し右の腕をね。口の側へ持っておいで。さあお母さんの口の側へね」
山吹は猪太郎の右の腕へ確り喰い付いて歯形を付けた。「その歯形は永久消えまい。お母さんの形見だよ。その歯形を見る度にお母さんの怨みを思い出しておくれ。