Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
はちじゅうはちや
八十八夜
Lesen Sie 八十八夜 (はちじゅうはちや) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.623 Zeichen · 28 Bildschirme
笠井さんは、ほろ苦く笑った。ここは別棟になっていて、ちゃんと控えの支度部屋もついているし、まず、最上等の部屋なのである。ヴェランダもあり、宿の庭園には、去年の秋は桔梗の花が不思議なほど一ぱい咲いていた。庭園のむこうに湖が、青く見えた。いい部屋なのである。笠井さんは、去年の秋、ここで五、六日仕事をした。
「きょうは、ね、遊びに来たんだ。死ぬほど酒を呑んでみたいんだ。だから、部屋なんか、どうだって、いいんだ。」笠井さんは、やはり少し気嫌を直して、快活な口調で言った。
宿のどてらに着換え、卓をへだてて、ゆきさんと向い合ってきちんと坐って、笠井さんは、はじめて心からにっこり笑った。
「やっと、――」言いかけて、思わず大きい溜息をついた。
「やっと?」とゆきさんも、おだやかに笑って、反問した。
「ああ、やっと。やっと、……なんといったらいいのかな。日本語は、不便だなあ。むずかしいんだ。ありがとう。よく、あなたは、いてくれたね。たすかるんだ。涙が出そうだ。」
「わからないわ。あたしのことじゃないんでしょう?」
「そうかも知れない。温泉。諏訪湖。日本。いや、生きていること。