Japanische Klassiker mit Furigana
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えんちょうのぼたんどうろう
円朝の牡丹灯籠
田中 貢太郎
Lesen Sie 円朝の牡丹灯籠 (えんちょうのぼたんどうろう) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.815 Zeichen · 16 Bildschirme
そして、一度来て中の方角は判っているので、赤松の生えた泉水の縁について往くと、其処に瀟洒な四畳半の室があって、蚊帳を釣り其処にお露が蒼い顔をして坐っていた。新三郎は跫音をしのばせながら、折戸の処へ往った。と、お露が顔をあげて此方を見たが、急に其の眼がいきいきとして来た。
「あなたは、新三郎さま」
お露も新三郎を思って長い間気病いのようになっているところであった。お露はもう慎みを忘れた。お露は新三郎の手を執って蚊帳の中へ入った。そして、暫くしてお露は、傍にあった香箱を執って、
「これは、お母さまから形見にいただいた大事の香箱でございます、これをどうか私だと思って」
と云って、新三郎の前へさしだした。それは秋野に虫の象眼の入った見ごとな香箱であった。新三郎は云われるままにそれをもらって其の蓋を執ってみた。と、其処へ境の襖を開けて入って来たものがあった。それはお露の父親の平左衛門であった。二人は驚いて飛び起きた。平左衛門は持っていた雪洞をさしつけるようにした。
「露、これへ出ろ」それから新三郎を見て、「其の方は何者だ」
新三郎は小さくなっていた。
「は、てまえは萩原新三郎と申す粗忽ものでございます、まことにどうも」