Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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じょうだんにころす

冗談に殺す

夢野 久作

Lesen Sie 冗談に殺す (じょうだんにころす) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.462 Zeichen · 29 Bildschirme

Aozora Bunko

そう思い思い私は下宿の表口の呼鈴を押して、閂を外してくれた寝ぼけ顔の女中に挨拶をした。いつもの通りに「ありがとう……お休み」……と……。その時に、帳場の上にかかった柱時計が、カッタルそうに二時を打った。

その時計の音を耳にしながら私は、神経の端の端までも整然として靴の紐を解く事が出来た。それから、いつもの足どりで、うつむき勝ちに階段を昇ったが、それは吾れながら感心するくらい平気な……ねむたそうな跫音となって、深夜の階上と階下に響いた。

……もう大丈夫だ。何一つ手ぬかりは無い。あとは階段の上の取っ付きの自分の室に這入って、いつもの通りにバットを一本吹かしてから蒲団を引っかぶって睡ればいいのだ。……何もかも忘れて……。

そんな事を考え考え幅広い階段を半分ほど昇って、そこから直角に右へ折れ曲る処に在る、一間四方ばかりの板張りの上まで来ると、そこで平生の習慣が出たのであろう、何の気もなく顔を上げたが……私は思わずハッとした。モウすこしで声を立てるところであったかも知れなかった。

……「私」が「私」と向い合って突立っているのであった……板張りの正面の壁に嵌め込まれた等身大の鏡の中に、階段の向うから上って来たに違い無い私が、頭の上の黄色い十燭の電燈に照らされながら立ち止まって私をジッと凝視しているのであった。