Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
Lesen Sie 凡人伝 (ぼんじんでん) von 佐々木 邦 (ささきくに) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 98.944 Zeichen · 202 Bildschirme
切れ!』と又同輩が叫びました。『決っして/\……』と娘は拝むばかりです。『逃げろ』と私は申しました」
「成程」
「無論許してやる積りでしたが、同時に『河原、卑怯だぞ』と罵られたので、娘が立って在方の方へ向った刹那、後ろから袈裟がけに切りつけました」
「到頭おやりでしたか?」
「全く魔が差したんです」
「しかし事情仕方がありますまい」
「娘は倒れました。そうして私の顔を恨めしそうに見つめたまゝ落ち入りました」
「はゝあ」
「無益の殺生を致しましたよ」
「間諜じゃなかったんですか?」
「はあ。間諜であってくれゝば宜かったんですが、罪も科もない良家の娘でした」
「何うして又そんな危いところへ通りかゝったんでしょう?」
「その日の夕方まで通行を許していたのです。後から分りましたが、橋袂を守っていた同輩の誰何を誤解したのでした。九州と東北ですから、言葉が能く通じません。娘は狼藉でも受けると思って、無暗に逃げ出したのでしょう。ドサクサ紛れで何方も慌てゝいましたから、斯ういう間違が随分あったのです」
「厭なお心持でしたろうね?」
と私はつい口に出した。
「迚も溜まりません。以来、その娘が未だに夢に現れます」