Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しょしゅうかいひんき

初秋海浜記

豊島 与志雄

Lesen Sie 初秋海浜記 (しょしゅうかいひんき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.606 Zeichen · 8 Bildschirme

Aozora Bunko

空には一面に星が輝いていて、雨の気配は更にない。おかしいな、と思う心が働くと共に、私はもう下駄をつっかけて、縁側から庭に降り立っていた。

爽かなそして露っぽい夜だった。月のない空には、あらん限りの星がきらきら輝いて、南から北へ走る茫と仄白い銀河を中心に、低く高く懸っている。その一つ一つが、暗い空のなかに、はっきり浮出して冴え返って、見つめていると気が遠くなるほど、無限の距離に散らばっている。そしてその光に乗って、殆んど感じ知られない何かが、銀線の震えのようなものが、一面に地上へ降り濺いでいる。気がついてみると、地上にはしっとりと露がおりて、芝草の葉は重く垂れ、砂は深く湿っている。軒から落ちる雨滴と聞いたのは、屋根にたまって滴る露の雫だった。

再び室の中にはいっても、私は書物を伏せたままにして、軒端の露の雫に耳を傾けていた。ぽたり……ぽたり……と、丁度糠雨の降る時のような雫の音で、それが大きな波音の間々に、しめやかな釘を打込んでいく。私はいつまでもぼんやりして、虫の声と雫の音とに、無心に聞き入りながら、煙草ばかり吹かしていた。どうしたことか、いつもは無雑作に投げすてる煙草の吸殻を、円い瀬戸の火鉢の縁に沿って、丹念に頭を揃えてつきさしてるのだった。