Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はつつぼみ

初蕾

山本 周五郎

Lesen Sie 初蕾 (はつつぼみ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.525 Zeichen · 35 Bildschirme

Aozora Bunko

歩きながら、……幾十万という人間のなかから、一人と一人の男女が結びつく、それがどんなに厳粛な機縁かということを身にしみて悟った、お民にはわからないか」

「…………」

お民は黙って俯向いていた。

「顔をおあげ、お民、相談があるんだ」

半之助はつと手を伸ばしてお民の肩を押えた。

「おれはこれから江戸へゆく、そして人間らしい者になってくる、どんな苦労をしてもやりぬいてみる決心だ、もちろん困難だし、なん年経って望みが果せるかわからない、だから待っていて呉れとは云えないが、もし、……もしおれが人らしくなって帰り、そのときまだおまえが独り身でいたら、おれの妻になって貰いたいんだ」

「待っていろとは仰しゃいませんのね」

お民はやや暫らく考えてから、こう云ってそっと男を見上げた。

「約束ではないんですね」

「約束じゃあない、いつ帰るとも、いや生涯かえれないかも知れないんだから、待てと云うことは今のおれにはできない、ただ、ちょうどいい折だから云っておこう、……お民、おれは本当におまえを愛していた、心から愛していたんだ、あんな約束はしたけれど気持には嘘はなかった、これだけがおまえに遣れる餞別だよ」