Japanische Klassiker mit Furigana
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ほうがんさぶろうのしょうたい
判官三郎の正体
野村 胡堂
Lesen Sie 判官三郎の正体 (ほうがんさぶろうのしょうたい) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.587 Zeichen · 25 Bildschirme
打ち明ける気になったら、この扉を三つ叩くんだよ、そうしたら明けてやろう、手引した相手の名を言わない内は、何日経ってもここは開けないよ」
ピシリ、重い鉄の扉を閉じて、鍵は英子の身体のどこかへ、スルリと滑りこませてしまいました。
「ワーッ、助けて、ヒー」
悲鳴に交って、猛犬の吠える声、屋上庭園の物凄い情景を後に、書生一人を番人に残して、英子は元の客間へ静々と帰りました。
「どうした?」
「お鶴は屋上庭園で仲よくブルと遊んで居るワ」
父男爵に答えた英子の眼には、恋敵を鰐の口へ投げこませた、エジプトの女王のような誇りと美しさがありました。
「あの屋上庭園は下まで六十尺もある、こんな時は高い建築も悪くないな」
「それに、郊外の有難さで、お邸の外の家へは五六丁もあるから、余程大きい声を出しても聞えませんね」
黒津は男爵に阿るように、窓から夕暮の景色を眺め乍ら、こう言います。
話が途切れると、再び恐ろしい沈黙が一座を領して、頭の上から、かすかに悲鳴、猛犬の唸り、手に取るようにそれが聞えます。
抗すべからざる圧迫が、宮尾、黒津、男爵の額に冷汗を浮かせ、その眼をカッと空に見開かせますが、その中で二人だけは、何事も無かった以前のように、平然として事件の推移を待って居りました。