Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わかれたるつまにおくるてがみ

別れたる妻に送る手紙

近松 秋江

Lesen Sie 別れたる妻に送る手紙 (わかれたるつまにおくるてがみ) von 近松 秋江 (ちかまつしゅうこう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.985 Zeichen · 103 Bildschirme

Aozora Bunko

行く銭が無い時には、私は五銭の白銅一つで、せめて電話でお宮と話をして虫を堪えていた。電話を掛けると、大抵は女中か、主婦かが初め電話口に出て、「今日、宮ちゃんいるかね?」と聞くと、「えゝ、いますよ。」と言って、それからお宮が出て来るのだが、その出て来る間の、たった一分間ほどが、私にはぞくぞくとして待たれた。お宮が出て来ると、毎時も、眼を瞑ったような静かな、優しい声で、

「えゝ、あなた、雪岡さん? わたし宮ですよ。」と、定ってそう言う。その「わたし宮ですよ。」という、何とも言うに言えない句調が、私の心を溶かして了うようで、それを聞いていると、少し細長い笑窪の出来た、物を言う口元が歴々と眼に見える。

「じゃその内行くからねえ。」と、言って、「左様なら、切るよ。」と、言うと、「あゝ、もし/\。あゝ、もし/\。雪岡さん!」と呼び掛けて、切らせない。此度は、「さよなら! じゃ、いらっしゃいな! 切りますよ。」と、向から言うと、私が、「あゝもし/\。もし/\。宮ちゃん宮ちゃん、一寸々々。まだ話すことがあるんだよ。」と何か話すことがありそうに言って追掛ける。終にはわざと、両方で、