Japanische Klassiker mit Furigana
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ひみつ
刺青・秘密
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 刺青・秘密 (ひみつ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.935 Zeichen · 66 Bildschirme
妾は始めより頭巾の女の君なる事を承知仕候。それにつけても相変わらず物好きなる君にておわせしことの可笑しさよ。妾に会わんと仰せらるるも多分はこの物好きのおん興じにやと心許なく存じ候えども、あまりの嬉しさに兎角の分別も出でず、唯仰せに従い明夜は必ず御待ち申す可く候。ただし、妾に少々都合もあり、考えも有之候えば、九時より九時半までの間に雷門までお出で下されまじくや。其処にて当方より差し向けたるお迎いの車夫が、必ず君を見つけ出して拙宅へご案内致す可く候。君の御住所を秘し給うと同様に、妾も今の在り家を御知らせ致さぬ所存にて、車上の君に眼隠しをしてお連れ申すよう取りはからわせ候間、右御許し下され度、若しこの一事を御承引下され候わずば、妾は永遠に君を見ることかなわず、これに過ぎたる悲しみは無之候。
私はこの手紙を読んで行くうちに、自分がいつの間にか探偵小説中の人物となり終せて居るのを感じた。不思議な好奇心と恐怖とが、頭の中で渦を巻いた。女が自分の性癖を呑み込んで居て、わざとこんな真似をするのかとも思われた。
明くる日の晩は素晴らしい大雨であった。私はすっかり服装を改めて、対の大島の上にゴム引きの外套を纏い、ざぶん、ざぶんと、甲斐絹張りの洋傘に、滝の如くたたきつける雨の中を戸外へ出た。