Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ひみつ
刺青・秘密
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 刺青・秘密 (ひみつ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.935 Zeichen · 66 Bildschirme
なぜ乳母が一緒に来てくれなかったんだろう。乳母はあんまり私がいじめるので、怒って家を出てしまったのじゃないか知ら。そう思いながらも、私はいつも程恐がらないで、その街道をひたすら辿って行った。私の小さな胸の中は、夜路の恐ろしさよりももっと辛い遣るせない悲しみのために一杯になって居た。私の家が、あの賑かな日本橋の真中にあった私の家が、こう云う辺僻な片田舎へ引っ越さなければならなくなってしまったこと、昨日に変る急激な我が家の悲運、―――それが子供心にも私の胸に云いようのない悲しみをもたらして居たのであった。私は自分で自分のことを可哀そうな子供だと思った。この間までは黄八丈の綿入れに艶々とした糸織の羽織を着て、ちょいと出るにもキャラコの足袋に表附きの駒下駄を穿いて居たものが、まあ何と云う浅ましい変りようをしたのだろう。まるで寺小屋の芝居に出て来る涎くりのような、うすぎたない、見すぼらしい、人前に出るさえ耻かしい姿になってしまって居る。そうして私の手にも足にもひびやあかぎれが切れて軽石のようにざらざらして居る。考えて見れば乳母が居なくなったのも無理はない。