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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひみつ

刺青・秘密

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 刺青・秘密 (ひみつ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.935 Zeichen · 66 Bildschirme

Aozora Bunko

横顔以上のものを私に見せようとしない。鼻の線を境にした向う側の半面は、山陰に咲く花のように隠れているのである。女の顔は絵のように美しいと共に、「絵のように」表ばかりで裏がないかの如く感ぜられる。

「小母さん、小母さん、小母さんは何処まで歩いて行くのですか」

私はこう云って女に尋ねたが、そのおずおずした声は、冴えた撥音に掻き消されて彼女の耳へは這入らなかった。

「小母さん、小母さん、………」

私はもう一遍呼んで見た。「小母さん」と云うよりは、私は実は「姉さん」と呼んで見たかった。姉と云う者を持たない私は、美しい姉を持ちたいと云う感情が、始終心の中にあった。美しい姉を持っている友達の境遇が、私には常に羨しかった。で、この女を呼びかける時の私の胸には、姉に対するような甘い懐しい気持が湧き上っていた。「小母さん」と呼ぶのは何だか嫌であった。けれど、いきなり「姉」と呼んでは余り馴れ馴れしいように思われたので、拠んどころなく「小母さん」にしてしまったのである。

二度目には大きな声を出したつもりであったが、女はそれでも返辞をしない。横顔を動かさない。ひたすら新内の流しを弾いて、さらり、さらり、と長い着物の裾を砂に敷きながら俯向いて真直に歩いて行く。