Japanische Klassiker mit Furigana
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けんきょう
剣侠
国枝 史郎
Lesen Sie 剣侠 (けんきょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 156.961 Zeichen · 310 Bildschirme
「陣十郎という武士を知っているかな?」
話を転じて浪之助は云った。
と、源女は首をもたげた。
4
「陣十郎! ……陣十郎! ……水品陣十郎! ……あなたこそどうしてあの男を!」
そう云うと源女はのしかかるように、衣装籠から身を乗り出した。
恐怖と憎悪とがあからさまに、パッと見開いた眼にあった。
凄じいと云ってもいいような、相手の態度に圧せられて、浪之助はかえってたじろいだ。
「いやわしはただほんの……それも偶然先刻方……榊原様のお長屋で……試合をしていたのを通りかかって……だがその男が桟敷にいたので……」
「ただそれだけでございますか」
源女は安心したように、そう云うと躰をグッタリとさせ、衣装籠へまた寄りかかった。
そうして眼を閉じ黙ってしまったが、やがて浪之助へ云うというより、自分自身へ云うように、譫言のように呟いた。
「陣十郎、水品陣十郎……何と云おう、悪鬼と云おうか……あの男のためにまア妾は……これまでどんなに、まあどんなに……苦しめられ苦しめられたことか! ……騙され賺かされ怯やかされ、旅でさんざん苦しめられた。……こんなにしたのはあの男だ。妾をこんなに、こんなにしたのは! ……病人に、白痴に、片輪者に! ……先生、お助け下さりませ! ……でも妾はどうあろうと、あれをどうともして思い出さなけりゃア……でも