Japanische Klassiker mit Furigana
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オチフルイかいじゅうろうてがらばなし
十二神貝十郎手柄話
国枝 史郎
Lesen Sie 十二神貝十郎手柄話 (オチフルイかいじゅうろうてがらばなし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.035 Zeichen · 254 Bildschirme
安心して一切を委せるがよい。と云うのはこれからこの部屋の中へ、そなたの胆を奪うような、奇怪な出来事が起こるからだ。驚いて気絶などしないように」
「はい有難う存じます。厚くお礼を申し上げます」
――で、お島はまた辞儀をした。もうこの頃は今の時間にして、午前の一時を過ごしていた。お島に病気が起こる頃であった。見ればカランスは両手をもって、大きな黒布を持っていた。あのスペインの闘牛師が、闘牛に向かって赤い布を、冠せようとして構え込む、ちょうどあのような構え方で、黒布を持ち構えているのであった。と、そういうカランスが、幸左衛門へ向かって云った。それを幸左衛門が通訳した。
「お島殿、カランス殿が仰せられる、鏡を一心にご覧なされと」
「はい」と素直にお島は云って、鏡の面を凝視した。鏡は朦朧と霞んでいた。煙りが凝っていると形容してもよく、朝の湖水の一片が、張り付いていると形容してもよかった。
物を写してはいなかった。四人立っているその四人の、誰もが写っていなかった。立っている位置のかげんからではあるが、蝋燭も写ってはいなかった。光は受けてはいたけれど、形を写していないのである。