Japanische Klassiker mit Furigana
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じゅうばんざっき
十番雑記
岡本 綺堂
Lesen Sie 十番雑記 (じゅうばんざっき) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.745 Zeichen · 16 Bildschirme
「あしたは九月一日だ。」
その前日に、その当時の形見ともいうべき「十番雑記」を発見したのは、偶然とはいいながら一種の因縁がないでもないように思われて、なんだか捨て難い気にもなったので、その夜の灯の下で再読、この随筆集に挿入することにした。
一 仮住居
十月十二日の時雨ふる朝に、わたしたちは目白の額田方を立退いて、麻布宮村町へ引移ることになった。日蓮宗の寺の門前で、玄関が三畳、茶の間が六畳、座敷が六畳、書斎が四畳半、女中部屋が二畳で、家賃四十五円の貸家である。裏は高い崖になっていて、南向きの庭には崖の裾の草堤が斜めに押寄せていた。
崖下の家はあまり嬉しくないなどと贅沢をいっている場合でない。なにしろ大震災の後、どこにも滅多に空家のあろうはずはなく、さんざん探し抜いた揚句の果に、河野義博君の紹介でようようここに落付くことになったのは、まだしもの幸いであるといわなければなるまい。これでともかくも一時の居どころは定まったが、心はまだ本当に定まらない。文字通りに、箸一つ持たない丸焼けの一家族であるから、たとい仮住居にしても一戸を持つとなれば、何かと面倒なことが多い。