Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちよこ

千世子

宮本 百合子

Lesen Sie 千世子 (ちよこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 83.104 Zeichen · 164 Bildschirme

Aozora Bunko

夜はかなり暗いあかりの下でほこりっくさい都になぐさめる人もない様にして一日の仕事につとめて居なければならないHのところに絵葉書に短かいたよりをしてやった。

白い被いをすみから隅までかけて気持の好い夜着にくるまって潮の笑声を子守唄にききなして眠った千世子は六時に起きるまでにHの夢ばかり見て居た。

寝床から出るとすぐ浜に出てひやい水に足をつけた。眠りからさめた許りのムシムシした足はやわらかくくすぐられる様に感じて居た。

そうして居る間に気持もはっきりと迷わない心でものを見る事が出来る様に思えた。

まだ何にもさわらない白いふっくりした手の掌にひかって居る水をすくって一寸唇につけて合わせて居た指をかるくゆるめると、糸の様に水は細く五つ色にまたたきながら落ちて行った。

こうして一日を始めた千世子の日はその日中嬉しい事ばっかりであった。

その翌日も翌日も海を見、海に話して日を送った。そうして顔の色も日の立つごとによく貧亡になった頭も目に見えない少しずつとまされて行った。

囲りの旅客を観察するとか批評するとか云う余裕のないほど千世子は海にきをとられて居た。

おきるとからねるまで浜に座って暮して居るのが何よりうれしいほど千世子の心は子供げなものになって居た。