Japanische Klassiker mit Furigana
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ちよじのおどろき
千代次の驚き
豊島 与志雄
Lesen Sie 千代次の驚き (ちよじのおどろき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.413 Zeichen · 19 Bildschirme
」
言葉は冗談の調子ですが、お客としての云い草じゃないし、眼色がへんに真剣なんです。それをふと真にうけて、あたしは考えこんでしまいました。
「では、お願いしますわ。」
云うといっしょに、眼の中が熱くなって、涙がいっぱい出てきました。場合がいけなかったんでしょう。前の晩に二人とも酔いつぶれて、朝遅く眼をさまして、夢のような気持でぼんやり顔を見合ってた時でした。村尾さんはあたしの涙を見ると、いきなりあたしの手をとって、お嬢さんか奥さんにでもするように、しおらしくうなだれて仰言るんです。僕は君といっしょになろうとか、君をすっかり自分のものにしようとか、そんなつもりでいるんじゃない。ただ、君にしっかり生きていてもらいたい。君はほんとの労働者だ。けれど、労働者としての矜りを持っていない。今の世に労働者はいちばん尊いのだから、それだけの衿りを持たなけりゃいけない。その矜りを持つには、売らないことだ。働くのはいくら働いてもいい。けれど、売ってはいけない。働くことと売ることはちがう。とそのようなことを、まじめに真剣に仰言るんでしょう。ふだんは無口なかただけれど、そんな時にはひどくお饒舌になるのでした。