Japanische Klassiker mit Furigana
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ちくまがわのスケッチ
千曲川のスケッチ
島崎 藤村
Lesen Sie 千曲川のスケッチ (ちくまがわのスケッチ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 81.668 Zeichen · 164 Bildschirme
で、復た私は起き上った。微温い風が麦畠を渡って来ると、私の髪の毛は額へ掩い冠さるように成った。復た帽子を冠って、歩き廻った。
畠の間には遊んでいる子供もあった。手甲をはめ、浅黄の襷を掛け、腕をあらわにして、働いている女もあった。草土手の上に寝かされた乳呑児が、急に眼を覚まして泣出すと、若い母は鍬を置いて、その児の方へ馳けて来た。そして、畠中で、大きな乳房の垂下った懐をさぐらせた。私は無心な絵を見る心地がして、しばらくそこに立って、この母子の方を眺めていた。草土手の雑草を刈取ってそれを背負って行く老婆もあった。
与良町の裏手で、私は畠に出て働いているK君に逢った。K君は背の低い、快活な調子の人で、若い細君を迎えたばかりであったが、行く行くは新時代の小諸を形造る壮年の一人として、土地のものに望を嘱されている。こういう人が、畠を耕しているということも面白く思う。
胡麻塩頭で、目が凹んで、鼻の隆い、節々のあらわれたような大きな手を持った隠居が、私達の前を挨拶して通った。腰には角の根つけの付いた、大きな煙草入をぶらさげていた。K君はその隠居を指して、この辺で第一の老農であると私に言って聞かせた。