Japanische Klassiker mit Furigana
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ちくまがわのスケッチ
千曲川のスケッチ
島崎 藤村
Lesen Sie 千曲川のスケッチ (ちくまがわのスケッチ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 81.668 Zeichen · 164 Bildschirme
可怖しい繁殖の声。知らない不思議な生物の世界は、活気づいた感覚を通して、時々私達の心へ伝わって来る。
近頃Sの家では牛乳屋を始めた。可成大きな百姓で父も兄も土地では人望がある。こういう田舎へ来ると七人や八人の家族を見ることは別にめずらしくない。十人、十五人の大きな家族さえある。Sの家では年寄から子供まで、田舎風に慇懃な家族の人達が私の心を惹いた。
君は農家を訪れたことがあるか。入口の庭が広く取ってあって、台所の側から直に裏口へ通り抜けられる。家の建物の前に、幾坪かの土間のあることも、農家の特色だ。この家の土間は葡萄棚などに続いて、その横に牛小屋が作ってある。三頭ばかりの乳牛が飼われている。
Sの兄は大きなバケツを提げて、牛小屋の方から出て来た。戸口のところには、Sが母と二人で腰を曲めて、新鮮な牛乳を罎詰にする仕度をした。暫時、私は立って眺めていた。
やがて私は牛小屋の前で、Sの兄から種々な話を聞いた。牛の性質によって温順しく乳を搾らせるのもあれば、それを惜むのもある。アバレるやつ、沈着いたやつ、いろいろある。牛は又、非常に鋭敏な耳を持つもので、足音で主人を判別する。