Japanische Klassiker mit Furigana
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ちどり
千鳥
鈴木 三重吉
Lesen Sie 千鳥 (ちどり) von 鈴木 三重吉 (すずきみえきち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.951 Zeichen · 41 Bildschirme
上へ出てくるにつれて、幻から現へ覚めるように、順々に小黒い色になる。しばらくいっしょに集ってじっとしている。やがて片端から二三匹ずつ繰りだして、列を作って、小早に日の当る方へと泳いで行く。ちらちらと腹を返すのがある。水の底には、泥を被った水草の葉が、泥へ彫刻したようになっている。ややあって、ふと、鮒子の一隊が水の色とまぎれたと思うと、底の方を大きな黒いのがうじゃうじゃと通る。
「大きなのもいるんですね。あ、あそこに」と指すと、
「どこに」と藤さんが聞く。しかしそれは写っている影であった。鮒子はやっぱり小さく上の方を行く。自分は足元の松葉をかき寄せて投げつける。鮒子は響のごとくに沈んで、争い乱れて味噌汁へ逃げこんでしまう。
藤さんが笑う。
手飼の白鳩が五六羽、離れの屋根のあたりから羽音を立てて芝生へ下りる。
「あの鴎は綺麗な鳥ですね」と藤さんがいう。
「あれは鳩じゃありませんか」
「ほほほほ、あれじゃないんですの。あたしね、ほほほほ」
「どうしたんです?」
「いいえ、あたしとんでもないことを思いだしたんですわ」と一人で微笑む。
「何を?」
「何でもないことです。――先達あたしがこちらへ渡ってくる途中でね、鴎が一匹、小さな枝切れへ棲って、波の上をふわりふわりしていたんですの。