Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
半七捕物帳
岡本 綺堂
Lesen Sie 半七捕物帳 (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.788 Zeichen · 15 Bildschirme
「明朝さるところへ持参しなければならぬのだから、気の毒だが今晩中に屋敷までとどけてくれ」
その屋敷は新宿の新屋敷で、細井といえばすぐに判るとのことであった。どこへか持参するというからは、なにかの事情で権門へ遣い物にするのであろうと喜右衛門は推量した。立ちぎわに侍はまた念を押した。
「かならず間違い無しにとどけてくれ、あと金は引きかえに遣わすぞ」
しかし自分はこれから他へ寄り道をして帰るから、日が暮れてから持参してくれといった。喜右衛門はすべて承知して別れた。前に「雷獣と蛇」の中にも説明してある通り、新宿の新屋敷というのは今の千駄ヶ谷の一部で、そこには大名の下屋敷や、旗本屋敷や、小さい御家人などの住居もあるが、うしろは一面の田畑で、路ばたに大きい竹藪や草原などもあって、昼でも随分さびしいところとして知られていた。そこへ日が暮れてから出向くのは少し難儀だとも思ったが、これも商売である。まして十五両という大きい商いをするのであるから、喜右衛門も忌応は云っていられなかった。勿論、ほかに奉公人もあるが、高値の売り物をかかえて武家屋敷へ出向くのであるから、主人自身がゆくことにして、喜右衛門は日の暮れるのを待っていた。