Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はんしちとりものちょう

半七捕物帳

岡本 綺堂

Lesen Sie 半七捕物帳 (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.208 Zeichen · 30 Bildschirme

Aozora Bunko

歩いて来た。その下駄の音を聞き付けたとみえて、女は待ち兼ねたように内からぬけ出して来た。前に懲りたのであろう。今度は傘をすぼめて差していた。

「徳寿さん。きょうは逃がさないよ」

呼びかけられて、按摩はおびえたように立ち停まったが、きょうも何か頻りに云い訳して摺り抜けて行こうとするのを女はまた曳き戻した。こうした捫着がたびたび続くので、半七も少しおかしく思って、もうつくろってしまった泥下駄を再びいじくるような風をして横眼でそっと窺っていると、按摩はあくまでも強情に振り切って、きょうも逃げるように此処を立ち去ってしまった。

「ほんとうにしようのない人だねえ」

口小言を云いながら女は内へ引っ込んだ。そのうしろ姿の消えるのを見送って、半七はもう五、六間ゆき過ぎている按摩の傘の白い影を追った。彼はうしろから声をかけた。

「おい、按摩さん。徳寿さん」

「はい、はい」

聞き慣れない声に按摩は少し首をかしげて立ち停まると、半七は傘をならべて立った。

「徳寿さん。寒いね。べらぼうに降るじゃあねえか。おまえにゃあ廓で二、三度厄介になったことがあったっけ。それ、このあいだも近江屋の二階でよ」