Japanische Klassiker mit Furigana
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はんとういっきしょう
半島一奇抄
泉 鏡花
Lesen Sie 半島一奇抄 (はんとういっきしょう) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.324 Zeichen · 27 Bildschirme
で、折れかかった板橋を跨いで、さっと銀をよないだ一幅の流の汀へ出ました。川というより色紙形の湖です。一等、水の綺麗な場所でな。居士が言いましたよ。耕地が一面に向うへ展けて、正面に乙女峠が見渡される……この荒庭のすぐ水の上が、いま詣でた榎の宮裏で、暗いほどな茂りです。水はその陰から透通る霞のように流れて、幅十間ばかり、水筋を軽くすらすらと引いて行きます。この水面に、もし、ふっくりとした浪が二ツ処立ったら、それがすぐに美人の乳房に見えましょう。宮の森を黒髪にして、ちょうど水脈の血に揺らぐのが真白な胸に当るんですね、裳は裾野をかけて、うつくしく雪に捌けましょう。――
椿が一輪、冷くて、燃えるようなのが、すっと浮いて来ると、……浮藻――藻がまた綺麗なのです。二丈三丈、萌黄色に長く靡いて、房々と重って、その茂ったのが底まで澄んで、透通って、軟な細い葉に、ぱらぱらと露を丸く吸ったのが水の中に映るのですが――浮いて通るその緋色の山椿が……藻のそよぐのに引寄せられて、水の上を、少し斜に流れて来て、藻の上へすっと留まって、熟となる。……浅瀬もこの時は、淵のように寂然とする。