Japanische Klassiker mit Furigana
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みなみさんのこいびと
南さんの恋人
豊島 与志雄
Lesen Sie 南さんの恋人 (みなみさんのこいびと) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.630 Zeichen · 36 Bildschirme
そして二人は、互にひしと、肉体を溶け合したいかのように、また永久に離れられないかのように、抱きあって泣いた。泣きながら、キスしあったり、身悶えしたり……。
そのばかさ加減には、おれも呆れた。仕末に困ったが、頭を掻くだけにした。
南さんは夢の中でのように云っている。
「僕はもう酒をやめます。不品行なこともしません。ほんとに誓います。」
山根さんも夢の中でのように云っている。
「いいえ、誓ってはいけません。」
「いえ、誓います。」
「いいえ、誓ってはいけません。」
それが互に嬉しそうなんだ。おれはチェッと舌打ちした。その音が聞えたかどうか、二人は何かはっとした気配で、あたりを見廻し、それから顔を見合ったが……ざまあみろ……微笑が凍りついていた。尤も、寒い夜だった。
おれの腑におちないというのは、その翌日からの南さんの一層ひどい憂欝だ。山根さんが云ったように、南さんは理想的な状態にあった筈だ。ただ、山根さんには多少不感症めいたところがあったかも知れないが、然しそれは取るに足りないことだし、南さんにしたところで、ホテルの昨夜、殆んど何にも分らなかったほどだし、とにかく、南さんの憂欝は、ちがった種類のものに相違なかった。