Japanische Klassiker mit Furigana
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なんとうたん
南島譚
Lesen Sie 南島譚 (なんとうたん) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.935 Zeichen · 18 Bildschirme
その他何やかや大きな声で私は彼を叱り付けたようである。暫くしてひょいと気が付くと、老人は何時か石の様な無表情さになっており、私の声も聞かなければ私の存在をも認めていない様子である。先程述べたあの不思議な状態、凡ての感覚に蓋をした・外界との完全な絶縁状態に陥っていたのである。私は驚いたが今更急に折れて機嫌をとる訳にも行かない。それに今となっては、何を言おうが何をしようが、凡てを閉じ円くなって武装した穿山甲の様に、彼は何ものをも知覚しないであろう。
沈黙の半時間の後、ふと我に返ったように老人は身を動かし、すうっと私の部屋から出て行った。
一時間ばかりして、私は、先刻――老人が来る前に確か机の上に置いた筈の懐中時計が見えなくなっているのに気が付いた。部屋中探したが見当らぬ。服のポケットにも無い。父親譲りの古いウォルサムもので、潮気と暑気とのために懐中時計の狂い勝ちな南洋にあっても、容易に狂いを見せない上等品である。以前マルクープが此の時計を、殊に其の銀の鎖を大変珍しがって、手に取ってはおもちゃにしていたことのあったのを、私は思い出した。私は直ぐに表へ出て彼の小舎を訪ねて行った。