Japanische Klassiker mit Furigana
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さんぐうがえり
参宮がえり
田中 貢太郎
Lesen Sie 参宮がえり (さんぐうがえり) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.325 Zeichen · 15 Bildschirme
女は煩そうに後の方へ顔を向けた。
「なに」
「俺と伯父さんとは、これから陸へ往って来る、お客さんが、飯がすんだら、蒲団をかけて、苫を立ててあげろ、苫を立てんと風邪を引く」
「良いよ、私が良いようにしてあげるから、そのかわり私がさっき頼んだことを聞いておくれよ」
女の声はみょうに重おもしかった。
「良いよ、判ったよ、判ったから、おとなしく番をしておれ、女子の癖に余計な口をたたくな」
女はもう何も云わなかった。船頭同志はがたがたと跫音をさしながら橋板を渡って往った。その二人の黒い影が鬼魅悪く忰の眼に見えた。
「船頭さんは、これでなかなか面白いことがあるな」
父親は二三杯の酒を飲んで好い気もちになっていた。
「お客さん、ちょっと往って来ます、なにかすることがあるなら、その小供にそう云うておくれ、遠慮はいらない、甥と二人で一杯やったらすぐ戻って来る」と、しゃがれた声で云って客の返事も待たずに、
「このむきなら、明日は良え追手じゃ……」
もうむこうの崖へあがったのか船頭の声は遠くなって聞えた。陸のほうには三つ四つの燈が見えた。父親は船頭に返事をしようとした詞を控えて女の顔を見た。