Japanische Klassiker mit Furigana
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とりかじ
取舵
泉 鏡花
Lesen Sie 取舵 (とりかじ) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.453 Zeichen · 15 Bildschirme
その友は二人分の手荷物を抱えて、学生は例の厄介者を世話して、艀に移りぬ。
艀は鎖を解きて本船と別るる時、乗客は再び観音丸と船長との万歳を唱えぬ。甲板に立てる船長は帽を脱して、満面に微笑を湛えつつ答礼せり。艀は漕出したり。陸を去る僅に三町、十分間にして達すべきなり。
折から一天俄に掻曇りて、と吹下す風は海原を揉立つれば、船は一支も支えず矢を射るばかりに突進して、無二無三に沖合へ流されたり。
舳櫓を押せる船子は慌てず、躁がず、舞上げ、舞下る浪の呼吸を量りて、浮きつ沈みつ、秘術を尽して漕ぎたりしが、また一時暴増る風の下に、瞻るばかりの高浪立ちて、ただ一呑と屏風倒に頽れんずる凄じさに、剛気の船子も呀と驚き、腕の力を失う隙に、艫はくるりと波に曳れて、船は危く傾きぬ。
しなしたり! と渠はますます慌てて、この危急に処すべき手段を失えり。得たりやと、波と風とはますます暴れて、この艀をば弄ばんと企てたり。
乗合は悲鳴して打騒ぎぬ。八人の船子は効無き櫓柄に縋りて、
「南無金毘羅大権現!」と同音に念ずる時、胴の間の辺に雷のごとき声ありて、
「取舵!」
舳櫓の船子は海上鎮護の神の御声に気を奮い、やにわに艪をば立直して、曳々声を揚げて盪しければ、船は難無く風波を凌ぎて、今は我物なり、大権現の冥護はあるぞ、と船子はたちまち力を得て、