Japanische Klassiker mit Furigana
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ふるきミニエチュア
古き小画
宮本 百合子
Lesen Sie 古き小画 (ふるきミニエチュア) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 70.298 Zeichen · 140 Bildschirme
彼の色の変った唇に、微笑の引つれが、見わけのつかない表情が浮んだ。彼は、ゆるゆる囁いた。
「スーラーブ……ターミナ、サアンガンのターミナは母だ」
俄に、ぱっと生命の最後の滴りが輝くように、スーラーブは、熱烈に云いつづけた。
「ああ、今死ぬものか? 死んでなるものか。行って云え、早く云え! ルスタムの息子が、父をたずねて来たのだと」
ルスタムの躯は木の葉のように顫え出した。彼の顔は、死んで行くスーラーブの顔より蒼くなった。彼は、呻き、両手を天に投あげると、涙を流してスーラーブの頭を抱きかかえた。何と云おうにも言葉が出なかった。彼は、自分の運が、想像出来る最も惨虐な一幕の上を、静かに自若と通りすぎるのを感じた。これはあり得ないことだ。信じ難い凶悪な偶然だ。而も事実で、自分の殺した息子の頭を抱えて泣く憐れな愚な父は、この父、ルスタム以外の何者でもない。然し、何のために自分の息子は、こんな危険極まる機会を作って自分に会おうとしたのか。あの突拍子もなく思った虫の知らせに、何故もう少し信じ得る証がなかったか。今朝の、大らかな晴々した五色の虹の光彩が最も厭うべき薄情な明るさで心の裡に半円を描いた。