Japanische Klassiker mit Furigana
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ふるむじな
古狢
泉 鏡花
Lesen Sie 古狢 (ふるむじな) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.891 Zeichen · 40 Bildschirme
月も十五に影を宿すであろう。出ようとすると、向うの端から、ちらちらと点いて、次第に竈に火が廻った。電気か、瓦斯を使うのか、ほとんど五彩である。ぱッと燃えはじめた。
この火が、一度に廻ると、カアテンを下ろしたように、窓が黒くなって、おかしな事には、立っている土間にひだを打って、皺が出来て、濡色に光沢が出た。
お町が、しっかりと手を取った。
背後から、
「失礼ですが、貴方……」
前刻の蓮根市の影法師が、旅装で、白皙の紳士になり、且つ指環を、竈の火に彩られて顕われた。
「おお、これは。」
名古屋に時めく大資産家の婿君で、某学校の教授と、人の知る……すなわち、以前、この蓮池邸の坊ちゃんであった。
「見覚えがおありでしょう。」
と斜に向って、お町にいった。
「まあ。」
時めく婿は、帽子を手にして、
「後刻、お伺いする処でした。」
驚破す、再び、うぐい亭の当夜の嫖客は――渠であった。
三人のめぐりあい。しかし結末にはならない。おなじ廓へ、第一歩、三人のつまさきが六つ入交った時である。
落葉のそよぐほどの、跫音もなしに、曲尺の角を、この工場から住居へ続くらしい、細長い、暗い土間から、白髪がすくすくと生えた、八十を越えよう、目口も褐漆に干からびた、脊の低い、小さな媼さんが、継はぎの厚い布子で、腰を屈めて出て来た。