Japanische Klassiker mit Furigana
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ふるむじな
古狢
泉 鏡花
Lesen Sie 古狢 (ふるむじな) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.891 Zeichen · 40 Bildschirme
……映画の明取りはちと変だね。どうかしている。」
と笑いながら、
「そうかい、温泉かい……こんな処に。」
「沸すんですよ……ただの水を。」
「ただの水はよかった、成程。」
「でも、温泉といった方が景気がいいからですわ。そしてね、おじさん、いまの、あれ、狢の湯っていうんですよ。」
「狢の湯?……」
と同伴の顔を見た時は、もうその市場の裡を半ば過ぎていた。まだ新しく、ほんの仮設らしい、通抜けで、ただ両側に店が並んだが、二三個処うつろに穴があいて、なぜか箪笥の抽斗の一つ足りないような気がする。今来た入口に、下駄屋と駄菓子屋が向合って、駄菓子屋に、ふかし芋と、茹でた豌豆を売るのも、下駄屋の前ならびに、子供の履ものの目立って紅いのも、もの侘しい。蒟蒻の桶に、鮒のバケツが並び、鰌の笊に、天秤を立掛けたままの魚屋の裏羽目からは、あなめあなめ空地の尾花が覗いている……といった形。
――あとで地の理をよく思うと、ここが昔の蓮池の口もとだったのだそうである。――
「皆その御眷属が売っているようだ。」
「何? おじさん。」
「いえね、その狢の湯の。」
「あら聞こえると悪ござんすわ。」
とたしなめる目づかいが、つい横の酒類販売店の壜に、瞳が蝶のようにちらりと映って、レッテルの桜に白い頬がほんのりする。