Japanische Klassiker mit Furigana
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ねむのきのかげ
合歓木の蔭
山本 周五郎
Lesen Sie 合歓木の蔭 (ねむのきのかげ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.740 Zeichen · 27 Bildschirme
私はあなたのお姿を見ました、こうしてあなたに話すことができる、はじめて私は生きて来たことを、自分が生きていることを神に感謝しました」
男のささやきはおよそ四半刻も続いた。奈尾の全神経はしびれたようになり、合歓木の幹にもたれた躯は地上から浮きあがって、泡沫のように空間へ消えてゆきそうに思えた。
「お手をとは申しません」男はやがてささやきの哀訴をした「せめてお袖の端に触らせてください、あなたが私を怒ってはいらっしゃらないということが知りたいのです」
「いいえお寄りにならないで」奈尾はおののくように云った、「わたくしここへまいるだけで精いっぱいなのです、これだけでさえ、もし人に知られたら」
「ああそのあとをおっしゃってはいけません、私はよく知っています、あなたがもうすぐお輿入れをなさるということをね、――私が絶望したり泣いたりするとお思いですか、いいえあなたはただよそへお輿入れをなさるだけです、境遇が変わり姓が変わるだけです、本当のあなたはそのまま少しの変化もなく私の心に生きていらっしゃる、私の眼にはあの日のお美しい姿がいつまでも残っているのです……なにものも、どんなちからも、私のなかに生きているこのあなたを、持ち去ったりうち消したりすることはできません、これでも私が仕合せでないでしょうか――」