Japanische Klassiker mit Furigana
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めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
Lesen Sie 名人地獄 (めいじんじごく) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.286 Zeichen · 301 Bildschirme
と一つ咳をした。それから部屋から廊下へ出、西側の廊下を南の方へ、お艶の部屋までツツ――と走った。これも忍術の一秘法、電光のような横歩きであった。
胆を潰したのは平八であった。これも空っぽの六蔵の部屋の、まず正面でピタリと止まり、思わず「ムー」と呻き声を上げた。
「木精ではない、木精ではない! やはり人間が歩いているのだ。ううむ、咳までしたんだからな。ではやっぱり召使いかな? いや待てよ、あの歩き方は?」彼はそこで考え込んだ。「これは普通の歩き方ではない。エヘンと咳をしておいて、ツツ――と辷って行ったあの呼吸。何んともいえない身の軽さ。……だがしかし俺はこんなところで、まごまごしてはいられない。至急赤格子に逢わなければならない。グズグズしていると秋山が、兵を率いて攻めて来る。もし赤格子が殺されたら、俺の使命は無駄になる。碩翁様にも合わす顔がない。……さんざ鼓賊に翻弄され、尚その上に今度の使命まで、無駄にされては活きてはいられぬ。……だが、どうも気になるなあ誰がいったい歩いているのだろう? 俺が歩けば向こうも歩き、俺が止まれば向こうも止まる。俺をからかってでもいるようだ。