Japanische Klassiker mit Furigana
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めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
Lesen Sie 名人地獄 (めいじんじごく) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.286 Zeichen · 301 Bildschirme
大正年間の今日でも、ややそのおもかげは残っていた。一方の石垣は取り壊され、麦の畑となっているが、もう一つの石垣は残っていた。そうして上州屋、つるが屋等の、昔ながらの茶屋もあった。つるが屋清吉の白壁に「桝形」と文字が刻まれてあるのは、分けても懐しい思い出といえよう。なお街道の岐道には、常夜燈といしぶみとが立っていた。
右従是北国街道 東二里安楽追分町 左従是中仙道
こう石標には刻まれてあるが、これも懐しい記念物であろう。
さてある夜若菜屋の座敷に、客と遊女とが向かい合っていた。客は美貌の富士甚内で、遊女は油屋のお北であった。別離を惜しんでいるのであった。二人の他には誰もいない。人を避けて二人ばかりで、酒を汲み交わせているのであった。
「お北、いよいよおさらばだ」甚内は盃を下へ置いた。「いうだけの事はいってしまい、聞くだけの事は聞いてしまった。もう別れてもよさそうだ」
「別れてもよろしゅうございますとも」お北はぼんやりとうけこたえた。「ではお立ちなさりませ」「おれも果報な人間だな。お北そうは、思わぬかな」「それはなぜでございます?」「なぜといってそうではないか、女郎屋の亭主から謝絶られたのだ」