Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ほえる
吠える
宮本 百合子
Lesen Sie 吠える (ほえる) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.148 Zeichen · 5 Bildschirme
私が、斑犬の遠吠えを気にするのは外でもない。此方で奇妙な不幸な境遇に置かれた犬が、冬の青空に向って遠吠えると、きっと暫くして、あの小窓の奥の女の人も吠え出す。やはり遠吠えで、半獣的な、意味の分らない叫声を、喉の奥から心から送り出す……狂人なのだ、その女の人は。有名な精神病院の監禁室の一部が丁度此方向きになっているので、見まいとしても私の眼に、その鉄棒入りの小窓が写る。
空地があるから、一町ばかりある距離を踰えて、斑犬の遠吠えが小窓の中へ聞えるらしい。おや、と気づいて耳を澄していると、大抵一分たたないうち、微かな女の唸り声が伝って来る。一度で犬はまたやめたことがない。二度、三度と吠える。一遍ごとに遠くの女の吠え声は高まって来、遂には、はっきりウォーイ、ウォーイというのがわかる。そうすると、面倒なことに、斑犬が、何か異様な興奮をその半人半獣の声から感得するらしいのだ。彼は益々長く切なく声尻を引張って遠鳴きする。彼方の狂人も、それに応えては、心一杯ウォーイと繰返す。この二重唱が起ると私は、いつも、始めのうちは極めて渋い涙が、眼ではない、鼻柱の心のどこかに湧き溜って来るように感じる。