Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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るそんのつぼ

呂宋の壺

久生 十蘭

Lesen Sie 呂宋の壺 (るそんのつぼ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.375 Zeichen · 36 Bildschirme

Aozora Bunko

頭の上でいそがしく歩きまわる足音が聞える。どうやら賊どもが働きだしたらしい。グズグズしてはいられない。金箱から銀子をつかみだし、息づく暇も惜しんで、つぎつぎに船底へ落しこんだ。

頭上の騒動はいよいよ爛熟し、ポルトガル人の叱する声にまじって、帆柱の倒れる音や重いものを曳きまわす音、大鋸で木を挽く音、手斧で打ち割る音、大破壊によってひき起されるすさまじい騒音が、ものの半刻ばかり休みもなくつづいていたが、そのうちに木の枝でも※ぜるような乾いた音とともに、えがらっぽい煙が胴ノ間に流れこんできた。

「こりゃ、いかんばい」

海賊どもは、船を壊して火を放けたらしい。これでポルトガル人の意図がはっきりした。海賊のくせに、金や積荷にかまわないのは、ふしぎだと思っていたが、サンチャゴに乗りこんできたのは、貨財が目あてなのでなくて、最初から船を焼くのが目的だったのだということがわかった。

吉之丞は汗を流して働いていたが、船を焼かれるのでは、こんなところへ銀子を隠しても無駄なことだと思い、つまらなくなってやめてしまった。

昨日の朝、東沙島の近くを通りすぎた。いまは、どちらへ向いても、島影も見えない大海のまっ只中にいるわけだが、こんなところで投げだされたら、助かる見込みはない。