Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
あづまばし
問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
永井 荷風
Lesen Sie 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (あづまばし) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.586 Zeichen · 159 Bildschirme
門内に進み入り、扉のかげの花屋で香花を買いながら、わたくしは何と言っていいかわからぬので、まず、それとなく、
「ここのお寺に西洋人のお墓があったと思いましたが、……。」
すると、花屋の婆は、折々弔いに来るものがあると見えて、
「ええ。御在ますよ。本堂の裏です。」
別に恠しむ様子もなく、火をつけた線香と、有合う手桶を片手にすたすた井戸の方へ。わたくしは境内を見廻しながらその後について行く。
墓は本堂のうしろ。山椿の花が見頃に咲いている崖を五、六歩上りかけた処に在った。崖土のくずれが、生茂った木の根で、危く支えられているので、傾斜した土の上に立てられた墓石は高さ三、四尺ばかりに過ぎぬが、前の方にのめりはしないかと危ぶまれた。石の頂に屋根形の飾りが載せてあって、英字で姓名及び官名。それに忌辰が刻してある。石の傍にあまり大きくない一株の梅があって、その枝には点々として花がさいていた。墓の周囲には結ばれた垣もないので、梅の木は隣りの墓に葬られた人の為めに植えられたものかも知れないが、わたくしの目には限りなく懐しい心持がした。立春を過ぎて後、あまり日数のたっていない早春の日は、冬日に変らぬ薄い軟かな光を斜に石の面に注ぎ、あるか無しかの微風に吹かれもつれる線香の烟の消え行く末までを、あきらかに照し出している。