Japanische Klassiker mit Furigana
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あづまばし
問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
永井 荷風
Lesen Sie 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (あづまばし) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.586 Zeichen · 159 Bildschirme
そう決心して昭和十七年の暮に手蔓を求め軍属になって満洲へ行き、以前入営中にならい覚えた自動車の運転手になり四年の年月を送った。
停戦になって帰って来ると、東京は見渡すかぎり、どこもかしこも焼原で、もみじの店のおかみさんや料理番の行衛もその時にはさがしたいにも捜しようがなかった。生家は船橋の町から二里あまり北の方へ行った田舎の百姓家なので、一まずそこに身を寄せ、市役所の紹介で小岩町のある運送会社に雇われた。
一、二ヶ月たつか、たたない中、新太郎は金には不自由しない身になった。いくら使い放題つかっても、ポケットにはいつも千円内外の札束が押込んであった。そこで先洋服から靴まで、日頃ほしいと思っていたものを買い揃えて身なりをつくり、毎日働きに行った先々の闇市をあさって、食べたいものを食べ放題、酒を飲んで見ることもあった。
夜は仲間のもの五、六人と田圃の中に建てた小屋に寐る。時たま仕事の暇を見て、船橋在の親の家へ帰る時には、闇市で一串拾円の鰻の蒲焼を幾串も買って土産にしたり、一本壱円の飴を近処の子供にやったり、また現金を母親にやったりした。
新太郎は金に窮らない事、働きのある事を、親兄弟や近処のものに見せてやりたいのだ。